column 018 40年間の音楽生活を振り返る

順風満帆の裏で – DIMENSION脱退

DIMENSIONを始めた時はあんなに長く続くとは夢にも思っていませんでした。ありえないほどのハイペースでアルバムをリリースしましたが、全くライブを行わなかった事が様々な憶測を呼びました。それでもいざライブを行ってみると満員のお客様で驚きました。リズムセクションを持たないフュージョングループという異端な存在でしたが、それが他との差別化にもなったのだと思います。毎年CDをリリース出来る喜びはありましたが、産みの苦しみももちろんありました。その中でPCを使用したリズムトラックのノウハウやレコーディング&ミックスに対する見識も深まりました。

活動を続けていく中で、アマチュア時代にずっとDIMENSIONを聴いていたという若いミュージシャンが出てきたことは嬉しい事でした。日本だけではなくアジアをはじめ多くの国の方々が私たちの音を聴いてくれていることも励みになりました。音楽の大海原を必死に漕いでもがいていた3人の船はもはや道標のような大きな船になっていたのです。

DIMENSIONはリーダーを置かず、各々が対等の立場で音楽を創り活動していくバンドです。3人の個性が上手く発揮できる時はとてつもない力を発揮しますが、いざ意見の食い違いが起こると容赦ないぶつかり合いも起きます。それぞれの活動で経験を積み重ね、自分の個性を築き上げていく中で徐々に考え方の違いも生まれて行ったのです。最初は大した事ない差異でも、時間が経つにつれて、それは大きくなっていきました。ここで全ての出来事を書く事はできませんが本当に悩みました。目を閉じれば聴衆と一体となり盛り上がったライブの風景が思い出されます。ファンの皆様からは本当に大きな力、勇気をいただきました。だからこそ、このDIMENSIONという屋号がなくなる事だけは避けたかったのです。自分はメンバーですが、その前にひとりのミュージシャン、そして普通の人間です。一度きりの自分の人生を嘘偽りなく、自分らしく生きたいのです。時間はかかりましたが、DIMENSIONという大きな船を降りる決断をしました。2019年の秋、52歳になっていました。

2020年2月18日のライブを最後にDIMENSIONという船を降りて、ひとり音楽の大海原に漕ぎ出しました。いや、ひとりではありません。そこには志をもって前に進む多くの仲間がいるのです。今まで気がつかなかった景色が見えた気がします。よし、自分も前を向いて進んでいこう。それはミュージシャン人生の第2章が始まったような気分でした。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 文は人なり。そして文は音なり。
    小野塚さんの文章は、まるでその演奏のような流麗さと情熱を感じさせるものでした。
    現状にもがき続けている自分にとって、大きな励みになるコラムでした。ありがとうございました。40周年ライブ、楽しみにしています。

  • とても興味深いお話でした。
    私もエレクトーンを習っていました。音楽を仕事に出来たらと夢見ていましたが、全く方法も分からず、結婚を理由に辞めて、子育てで自分が好きな音楽やコンサートにもなかなか行かれなかったですが、子育ても落ち着いてきて、2年ほど前、30年くらい前に一度行った渡辺貞夫さんのコンサートに再び行き、とても素晴らしく、これからは可能な限りコンサートに行こうと思ってます。小野塚さんのアレンジや、みなさんの一体感や貞夫さんに寄り添う演奏がとても好きです。

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